PCが普及し、スマートフォンが一般的となった今、その本質に迫るこの作品がどうしても頭から離れない。

初めて見始めたのは確か2年ほど前。原作はヤングマガジン海賊版から1989年に出された。その後、ストーリー展開し続編が出され、アニメ化、映画化、つい最近はハリウッド版としてリメイクされた世界的アニメ。

一般的な人気作とは好まれている視聴者層が少し違う。テーマが分かりにくかったり、理解する為の前提知識が必要だったりと、一般大衆向け作品では無いのが大きな理由かもしれ無い。しかし、だからこそ、ぜひ見て欲しい作品でもある。

何がそんなに人をひきつけるのか?結局何が言いたいのか?そもそもどうゆう話なのか?ネタバレしながら少し掘り下げたいと思う。

 

攻殻機動隊とは?

そもそもこのタイトルの意味がわかりにくい。攻殻と言えば、カニやエビなどの甲殻類をイメージしてしまう。機動隊は武装集団や特殊部隊の様な響きである。

原作者である士郎正宗は、当初「GHOST IN THE SHELL」という題での発表を考えていた。しかし、雑誌編集者からこっちのタイトルで行こう、と変更を余儀なくされた。

「GHOST IN THE SHELL」はアーサー・ケストラー著の『The Ghost in the Machine(機械の中の幽霊)』から取られている。作品のモチーフや思想もそれに習っている。

ここに出てくる【GHOST】は幽霊という意味よりも、魂や精神性という表現として使われている。つまり、一番言いたいのは、殻の中(機械)に宿る魂や精神性というものが主題である。

主人公の草薙素子は全身義体化したサイボーグ。脳だけが生身の自分自身という存在である。もちろん、時代設定も未来であり、1989年にも、2017年でもあり得無い話。そんな中で、言いたいのが、この魂や精神性についてである。

警察内の公安9課に所属するが、公安9課は表向き存在せず、政府や警察が秘密裏に解決したい重大な問題を解決する為の秘密部隊である。

草薙素子を中心にあらゆる政治問題や武装問題などを解決していくストーリーが攻殻機動隊と言える。

 

政府・自衛隊・諸外国・大企業、そして一般市民

アニメシリーズとして二つが制作された。一つ目は小さな問題を乗り越えていく単発のものの作品で徐々に攻殻機動隊の世界観を紹介していく。そして、最後には「笑い男」という天才ハッカーとの対決に挑む。

二つ目は、その前提を元に、公安9課のメンバーの生い立ちにも少し触れ、特殊部隊が結成された背景や部隊員の心理などにも深く迫る。そして最終的には「難民」「核戦争」という大きな事件への解決へと向かっていく。

その問題に出てくるテーマこそが、BESOがぜひ見て欲しいと思うポイント。

政府の思惑、自衛隊(作中では自衛軍)の存在意義、外交関係がいかに行われているのか、大企業とはどういう存在なのか、そしてそれを考え無い一般人。

一番見るべきは一般人である我々である。計り知れない速度で発展する人工知能AI。利益に走る一般企業。国民・一般人を支配しようとする政府。防衛という名の侵略を目論む自衛軍。

まずは、何が起きているのか知ることがスタートラインなのだと思う。

インターネットがここまで普及する前の1989年にこの主題で作品を書き始めた士郎さんの先見の明は驚愕に値する。しかし、この作品で随所にちりばめられている軸となる要素は、多くが古くからの哲学文書から引用されている。

つまり、現代の問題であるAIの問題や政治問題と古来から哲学者が悩んできた内容はやはり重なるところがあり、時代が変わっても、使う道具や環境が変わっても、人間の本質の問題は変わらない、ということなのかもしれない。

そして、最終的に「笑い男」も難民を指導していた「クゼ」も革命を起こす為に、非合法な活動を繰り広げていた。

それを受けて、この政治が乱れ、国民の生き方が問われる現代において考えさせられる事が多分にあるのがこの作品だと思った。

STAND ALONE COMPLEX

作中に出てくる用語として、STAND ALONE CONPLEX という言葉がある。

個人として(STAND ALONE)活動しているのに、無意識のうちに団体行動をとってしまう(COMPLEXとは複合する)という状態をさす言葉。

これは、一人一人がPCやスマートフォンを持っているのに、知らず識らずに同じ情報や同じ思想を植えつけられている状態に近いと思う。

一昔前で言う、テレビ・新聞・雑誌・ラジオなどのメディアであり、一言で言うと洗脳とも言える。

それに疑問を持ち、真っ向から対立した「笑い男」と「クゼ」が大きな敵(政府や大企業)に立ち向かい、主人公である全身義体の草薙素子の脳(GHOST)が揺れ動かされる。

何が正義で、何が正しいのか?

答えはなく、ただただ自分がどんな行動をとるのか。

そこにはどんな信念があり、どんな理念のもとに形成されているのか。

そんな事を深々と考えさせられる作品。

比較対象には全くならないが、ハリウッド版「GOHST IN THE SHELL」と同時期に爆発的人気になった「君の名は」とは反比例のような結果になった。

ほぼ無名だった映画が大ヒットし、昔からコアなファンに見守られてきた大作が不発に終わる。

いささか残念な気もするがこれが現状なのだと思う。

問題は、それを受けて個人がどのように生きていくかだと思う。